金融工学を独習するためのブック・ガイド



現在 90冊 掲載

 金融工学を勉強したいけれど、何をどこから始めたらいいのかさっぱりわからないという方も多いと思われます。 そこで、素人が独学で一から習得するために役立ちそうな書籍(和書)を紹介します。 無論、すべてが素晴らしい本というわけではありません。読みにくい本、買う必要がなかったと思える本などもありますが、 率直に掲載します。
 基本的にすべて私が所蔵し、読んだ本なので、ご質問等がございましたら、 メールでお寄せください。
 なお、各書籍については価格改定がなされているもの、版が改まっているもの、既に絶版となっているものが 含まれている可能性もありますので、ご注意ください。
 今後も随時更新してゆきます。


1.金融工学 <文庫・新書>

まずは、手軽に入手しやすい文庫・新書版から。

No. 書名 著者名 出版社名 出版年 価格
(税抜)
コメント 難易度
1-1 金融工学とは何か 刈屋武昭 岩波新書 2000年 660円 書名どおり金融工学がどんなものであるかの基礎を学ぶのに適しています。 数式などはほとんど出てきません。 **
1-2 金融工学の挑戦 今野浩 中公新書 2000年 700円 金融工学の成り立ちから最近のホットな話題まで丁寧に解説されていて、 著者のこの分野にかける意気込みや愛情が伝わってきます。こちらも数式はほとんど出てきません。 **
1-3 金融工学、こんなに面白い 野口悠紀雄 文春新書 2000年 690円 理論のエッセンスを、ちょこちょこっと盛り付けた幕の内弁当のような本。 金融工学を概観して雰囲気を知るのには良い。これで興味が湧いたら、同氏の「金融工学」(ダイヤモンド社)に進むと良いです。 **
1-4 金融工学マネーゲームの魔術 吉本佳生 講談社+α新書 2000年 880円 身近な例を使って理論を説明している点、非常にとっつきやすく面白おかしく読めます。 「金融工学でカネ儲けはできるのか?」という章では、世間の金融工学ブームを少し覚めた目線で見、 警鐘を鳴らしています。 *
1-5 フィナンシャル・エンジニア 金融工学の担い手たち 石井至 講談社+α新書 2000年 780円 金融工学と、そこで働くフィナンシャル・エンジニア(金融工学者)の歴史を追いつつ、理論を説明してくれます。 医学部出身の著者がこの分野に入ってきた経緯なども紹介されています。 *
1-6 Excelで学ぶ金融市場予測の科学 保江邦夫 講談社BLUE BACKS 2000年 940円 ギャンブルを例にとりながら理論を説明し、Excelを使ってオプション価格を計算する方法などを具体的 に解説しています。 **
1-7 証券投資理論入門 大村敬一・俊野雅司 日経文庫 2000年 880円 証券投資理論を基礎から解説しています。気軽な読み物レベルを超え、学習のための入門書といった感じ。厚さのわりに内容は濃いです。 が、帯に短したすきに長しの感も。 **
1-8 [経済学入門シリーズ]金融工学 木島正明 日経文庫 2002年 860円 入門書にありがちな、結論だけを簡単そうに羅列するやり方ではなく、筋道立ててきちっと理解できるように構成された好著。 高度な数学は極力避け、「詳細は専門書を参照してください」という表現が各所に出てくる。 著者の生真面目さがとてもよく伝わってくるが、専門書を参照せずに読み進めると非常にフラストレーションが溜まる。 この1冊で金融工学の全貌が理解できるわけではないが、更なる学習意欲をそそられる。"そそられない人"は、 もっと平易な上記1-2〜1-4あたりを先に読むべきでしょう。 ***
1-9 文系人間のための金融工学の本 土方薫 日経ビジネス人文庫 2007年 695円 「はまちスワップ」。現実には存在しないそんなデリバティブ商品を使って、 リスクとは何か、リスクをコントロールするとはどういうことか等、わかりやすく解説してくれています。 数式からではなく、理屈から金融工学を考えてみようという入門書。 *
1-10 「金融工学」は何をしてきたのか 今野浩 日経プレミアシリーズ 2009年 850円 日本における金融工学の旗手の一人として名高い著者が、近年の金融工学バッシングの中で、 自らの仕事を顧みるとともに、リーマンショック以降の「金融工学悪玉論」に対して、真っ当な反論を展開。 そもそもこの人は、金融工学など経済学ではないという経済学者からの蔑みに対し、 あえて「理財工学」ということばを使うなど、 この分野が立派な学問として成立するよう真摯な努力を続けてきた方。 一種のドキュメンタリーとしても読め、心から応援したくなってしまいます。 *


2.金融工学 <入門書>

単行本ですが、平易で読みやすい入門書です。

No. 書名 著者名 出版社名 出版年 価格
(税抜)
コメント 難易度
2-1 図解でわかる 金融工学入門 石井至 日本能率協会マネジメントセンター 2000年 1800円 見開きで1項目を説明する形式で、文字が大きく、読みやすい。 ステップを追って理解してゆけるように工夫がされています。 *
2-2 事典 収益率で経済がわかる 芹澤数雄 中央経済社 1998年 1600円 経済学やファイナンス理論を基礎から学ぶために、数値例を用いて非常に丁寧に解説しています。 出てくる数式も極めて平易。 *
2-3 金融工学の悪魔 吉本佳生 日本評論社 1999年 1500円 金融工学は得体の知れない難解な理論などではない。騙されてはいけない。こんなに簡単に説明できるのだ と読者に語りかける本。 *
2-4 金融工学の救世主 前田文彬 日本評論社 2000年 1500円 上記吉本氏の本がくだけた啓発本だとすれば、同じシリーズでもこちらは生真面目な教科書的。 読みやすいが内容は高度。 **
2-5 金融工学のマネジメント DIAMONDハーバードビジネスレビュー編集部 ダイヤモンド社 2001年 2400円 ハーバード・ビジネススクールの機関紙Harvard Buisiness Reviewに掲載された論文を集めたもの。もちろん邦訳。 論文というよりは学会発表のオムニバスのような、いわばサワリの部分だけ。 *
2-6 ラーメンでわかる投資の理論 山本御稔 ダイヤモンド社 2003年 1500円 これ以上気楽に読める本はない、というほどくだけた入門書だが、金融工学の基本的な考え方は身に付く。 今まで何を読んでもお手上げだった人にぜひお勧めしたい好著。 *
2-7 大阪大学新世紀セミナー
金融工学
仁科和彦・小谷眞一・長井英生編 大阪大学出版会 2003年 1000円 90ページに満たない、非常に薄い本です。学生の他広く一般社会人に向けた入門書という位置づけであり、 「金融工学とは何か」「金融工学の歴史」などから丁寧に書かれていて、初心者にも興味深く読み進められる。 ただ「金融工学の数学的基礎」では、できるだけ平易に説明しようとしている点はよいけれど、 そもそもこの薄い本に数学の説明は要らなかったのでは?とも思います。 *
2-8 ビジネス金融工学入門
リスクとデリバティブ
西村寿夫 中央経済社 2003年 3000円 金融実務界(生保会社)に身を置く著者が、実務的な視点に立って、証券分析等に必要な数理を基礎から解説しています。 わかりやすく書こう、という親切心のあまり、数学の厳密な証明がカットされていたりするので、著者の意に反して、 所々とてもわかりにくくなっています。こんな難しいことは要らないよといって、結論だけ示すので、真剣に勉強したい人にはフラストレーション を誘発するでしょう。反面、既に分かっている人には、知識の再確認に良いでしょう。帯に「やっぱり難しい金融工学を、 何度も挫折した金融工学を、それでもマスターしなければならないあなたに強い見方!」と書かれているけれど、 今まで挫折していた人が、この本で完全攻略するのは、残念ながら無理でしょう。 **
2-9 やわらかく考える金融工学
ツキと後悔のリスク分析
土方薫 PHP研究所 2005年 1400円 ほとんど数式は出てきません。金融工学の考え方のエッセンスを紹介した、文字通りやわらかい本。ただ、その内容は、 著者が「はじめに」でも書いているように、「理論に基づいて計算されたリスク(理論上のリスク)と、 実際に人が感じるリスク(リアリティのあるリスク)について、それらの差異をどうリスク分析に反映させるべきか」 というテーマに際し、流行の「行動ファイナンス」における「プロスペクト理論」を紹介するなど、極めて理論的な説明がなされています。
目次を拾い読みすれば、「後悔のリスクヘッジ」「宗教の公正価値」「恋愛をめぐる怪しい合理性」「こころと理論価格」などなど、 思わず読んでみたくなるコンテンツは、独自の視点で易しく書かれています。楽しい読み物としてお勧め。
*


3.金融工学 <専門書・解説書等>

少し腰を据えて勉強するために。

No. 書名 著者名 出版社名 出版年 価格
(税抜)
コメント 難易度
3-1 現代ファイナンス理論入門 仁科和彦 中央経済社 1996年 3500円 ファイナンス理論のイロハを学ぶのに最適。大学の授業で教科書として使われているもの。 ***
3-2 資本市場とコーポレートファイナンス 新井富雄・渡辺茂・太田智之 中央経済社 1999年 3500円 企業財務に的を絞った内容ですが、ファイナンス理論の基礎を学べます。 2色刷りで、見やすい紙面構成です。 ***
3-3 経済学とファイナンス 西川俊作編・浅子和美ほか著 東洋経済新報社 1995年 3800円 証券アナリスト検定試験の経済学のためのテキスト。経済学、金融論、国際金融論の3部構成。 マクロ経済学を勉強したことがない人は、まずはこの1冊を読むことをお勧めします。 ***
3-4 証券投資論[第3版] 仁科和彦 日本経済新聞社 1991年 5400円 こちらも証券アナリスト検定試験のための指定テキスト。約600ページにも及ぶ分厚い本ですが、 これを読破すれば、基礎がしっかりできること請け合いです。 ***
3-5 金融工学
−ポートフォリオ選択と派生資産の経済分析
野口悠紀雄・藤井眞理子 ダイヤモンド社 2000年 3200円 金融工学の全体像を網羅した丁寧な教科書。難易度の高い部分は細かい解説がなされていて読みやすいです。 ****
3-6 金融工学の基礎 刈屋武昭 東洋経済新報社 1997年 3500円 無裁定価格理論の基礎と応用にテーマを絞った教科書。高度な数学的証明も出てくるので、 ファイナンス理論、確率論等の基礎が出来ている中級者以上向け。 *****
3-7 金融工学・数理キーワード60 興銀第一フィナンシャルテクノロジー 編 金融財政事情研究会 2001年 2200円 金融工学の数理に関する60のキーワードを解説した事典。証券や派生証券のみならず保険数理まで カバー。通して読むというより、座右に置いて使える本です。 ****
3-8 金融工学入門 刈屋武昭・小暮厚之 東洋経済新報社 2002年 2600円 金融工学を「きちんと」勉強するために丁寧に書かれた入門書。じっくり着実に進めば、 とてもわかりやすい本です。しかし、これが入門書と言えるのか。確かに、簡単な数学の約束事ではあるが、 何の説明もなく、「exp(・)」が出てきたり、「Xが区間(−∞,x]に入る確率」と言われても、それが、 eのべき乗を意味したり、(a,b]とは半開区間だと知らない人は、そこで止まってしまうはず。 やはり、わかっている人からみたわかりやすさかな、と意地悪く思う。刈屋先生ごめんなさい。 ***
3-9 コンピュータ金融工学入門
‐エクセルとマセマティカによる実践的ポートフォリオの構築‐
大川勉 阿吽社 2002年 2800円 普段パソコンをあまり使わない人にも、ExcelやMathematicaを使って証券分析が簡単にできるようにと書かれた指南書。 指示のとおり操作すれば計算やグラフ作図ができるようになっており、ご丁寧にCD-ROMまでついている (個人的にこのCDは要らないと思う)。金融工学の「35歳ルール」(35歳以上の人や文系出身者には理解不能と言われている) も恐くないと、68歳の著者が"叛旗を翻す"べく書いたとのことだが、 パソコンをあまり使わない人がMathematicaは買わないだろうし、Excelだって覚束ないだろう。その点、かなり無理がある。 ***
3-10 MBAビジネス金融工学
デリバティブとリアルオプション
小林啓孝 中央経済社 2003年 2800円 "従来この分野の本は、ほとんどが数学的に高度な説明を加えたものか、反対に、単に定性的な説明のみを行っているものかの どちらかだが、本書はその中間を狙ったもの"ということである。確かに、数式が出てくるところでは、かなり丁寧に説明してくれている。 真面目に勉強したい初学者向けと言える一冊。大学院の講義で使ったものがベースになっているとのこと。なるほど。 **
3-11 道具としての金融工学 藤田岳彦 日本実業出版社 2005年 2200円 「確率の歴史」から始まって、確率論の基礎、デリバティブとは何かという説明、 そしてブラック・ショールズ方程式へと進んでゆきます。各所に練習問題が置かれ、 ワークブックとして使用できますが、やはり微分や微分方程式などの基礎的素養がないと、最後までたどり着くのは難しい。 まえがきに、「近ごろ、文系のための金融工学、デリバティブの解説本など、数学をあまり用いない本がたくさん出ているが、 本書はあえて、逆に数式を使ったほうがわかりやすいという読者のために、数式を随所にとり入れ、適切に説明した」 とあります。 ****
3-12 道具としてのファイナンス 石野雄一 日本実業出版社 2005年 2400円 目次には「将来価値とは」「リスクとは」「EVAって何?」など、 基礎的な語句が並んでいます。実際の中身も、EXCELの利用方法が詳しく解説されていたりして、 初心者にもやさしい書き方になっています。 ファイナンスを基礎から学びたい普通の人向け。 **


4.数学

金融工学を学ぶために必要な数学の知識を基礎から習得するために。

<
No. 書名 著者名 出版社名 出版年 価格
(税抜)
コメント 難易度
4-1 アナリストのための数学入門 小峰みどり ビジネス教育出版社 1989年 1845円 証券投資の入門書レベルで使われる非常に平易な数学から本当に噛んでふくめるように丁寧に解説してくれています。 基礎が出来ている人ならば、きっと退屈に感じます。反対に、この程度でつまづいているようだと、金融工学はおぼつかないでしょう。 *
4-2 数学の言葉づかい100
−数学地方のおもしろ方言−
数学セミナー編集部編 日本評論社 1999年 1900円 数学に関して正規の高等教育を受けたことのない人にとって、数学独特の表現は、時に意味不明なもの。 一意に、一般性を失わずに、q.e.d、一次従属、特異解、収束、発散・・・などなど。面白おかしく解説されていて、 読み物として興味深い本です。 *
4-3 すぐわかる微分積分 ほか 石村園子 東京図書 1993年 2200円 読者として理系の大学1年生を想定した本。書き込み形式で、ステップを追って学習できます。 高校時代の微積分を思い出したい、復習したい人向け。なお、この「すぐわかる」シリーズは、 他にも線形代数、統計解析、微分方程式、フーリエ解析等多数出ています。 **
4-4 金融証券のための ブラック・ショールズ微分方程式 石村貞夫・石村園子 東京図書 1999年 2800円 微積分の基礎から始まり、微分方程式、伊藤の公式、ブラック・ショールズとステップを追って習得できます。 こちらも書き込み式。少ないページ数に詰め込んであって飛躍が大きいので、これでわかる人は初めからわかっている人だし、 わからない人はこれを1回読んだくらいではわからないでしょう。 ****
4-5 金融証券のための リスク管理と統計解析 石村貞夫・和田喜美雄 東京図書 2000年 2800円 上記4-4が人気本となったため、その後相次いで出され、「2匹目のドジョウ本」と言われかねないですが、 それぞれテーマを絞っており、段階を追って学習できるドリル形式で統一されています。 全部を丁寧に学習すれば、かなりの力がつくはずです。 ***
4-6 金融証券のための ファイナンシャル微分積分 石村園子・石村貞夫 東京図書 2000年 2800円
4-7 金融証券のための ブラック・ショールズ式とその応用 原田重寿 東京図書 2000年 2800円
4-8 確率微分方程式−入門前夜−
(すうがくぶっくす18)
保江邦夫 朝倉書店 1999年 2500円 薄い本であり、しかも所々イラストが入ったりして見た目は平易な感じですが、 途中からかなり難しくなってくるので、読破するにはかなりの根気が必要です。 ****
4-9 Excelで学ぶファイナンス1
金融数学・確率統計
木島正明 金融財政事情研究会 1995年 2233円 行列や微積分から始まり、金融数学の基礎をExcelを使って理解するために書かれた本。 「演習」を実際にパソコンでやってみると理解が深まります。 ***
4-10 Excelで学ぶファイナンス2
証券投資分析
藤林宏・岡村孝・河内規称 金融財政事情研究会 1995年 2233円 こちらは具体的に証券投資分析をExcelでやってみましょうという本。 上記4-9とシリーズものになってはいますが、数学の基礎が出来ている人はこちらだけでよいでしょう。 ***
4-11 デリバティブの数理
(SGCライブラリ6 臨時別冊・数理科学)
三浦良造 サイエンス社 2000年 1333円 雑誌の別冊でA4サイズのワークブック形式ですが、派生証券の数理に絞り内容のしっかりした本。 ***
4-12 よくわかるブラック・ショールズモデル 蓑谷千凰彦 東洋経済新報社 2000年 2500円 「35歳以上の文系出身者にも理解できます」というふれ込みですが、線形代数、微積分、統計学、確率論等の 基礎ができていないとツライですし、数字と記号を見るだけでアレルギーが・・・という人にはお勧めしません。 *****
4-13 ファイナンス確率過程と数値解析
−金融工学を完全に理解したい読者のための独習テキスト
西田真二 シグマベイスキャピタル 2001年 6000円 微積分の基礎から段階を追って極めて丁寧に解説してくれているので、結果として分厚い本になっています。 まさにこんな体系的なテキストが欲しかった!という本です。 想定している読者層は、「高校までは数学が得意だったものの、大学では文系の学部に進み、 現在は金融関連の実務に携わり、学習意欲は高いが多忙な実務者」だそうです。 *****
4-14 ゼロからわかる金融・証券のためのビジネス数学 岸本光永 日本経済新聞社 2002年 1900円 2色刷で読みやすい。中学、高校に帰って本当に基礎からやり直したい人にはお奨めです。 数式の解き方など、これ以上はないというくらい丁寧に解説してくれています。 「こんな初歩的なことくらいはわかる」そう思えることが大切です。中身は盛りだくさんなので、 じっくりこなしていってください。逆に、数学に苦手意識のない人なら、読む必要はないでしょう。 *
4-15 道具としての物理数学 一石賢 日本実業出版社 2003年 2200円 いわゆる数学的思考が好きな人にとっては、わくわくしながら読み進められます。微積分、線形台数等から始まって、 物理に必要な高度な数学まで一気に駆け上がります。式の展開なども非常に丁寧に説明されていて、著者の生真面目さがわかります。 どのページを開いても数式満載だし、ページを追うごとに加速度的に難しくなってゆくので、理解しながら進もうと思うと、 鉛筆を用意して自分で数式の展開などしながら勉強する必要があります。経済や金融工学には必要ない部分が多いので、 物理に興味のない人にはお勧めしません。 *****
4-16 道具としての微分方程式 野崎亮太 日本実業出版社 2004年 2200円 4-15「道具としての物理数学」と同じシリーズですが、著者が違います。 金融工学などで多用される微分方程式を、それが具体的に使われる場面(特に物理学)に即して解説してくれています。 物理等に馴染みがないと、正直言って敷居が高いですが、難解な数式に惑わされずに、その根底に潜む意味を理解するように読み進めれば、 知的好奇心が大いに刺激されます。著者は若い高校教師ですが、こんな先生に巡り会っていたなら、きっともっと数学が好きになっただろうな、 と思わせる方。専門の数学に留まらず、著者の幅広い教養に基づいた多彩な文章表現には、ただただ脱帽です。 こんなに面白い数学の本に出会えたことは幸せだと、私は思いました。 ****
4-17 数学を人に教えられる本 馬場敬之 マセマ出版社 2004年 1200円 「人に教えられる本」シリーズ3部作です。先生と生徒との会話形式で、本当に初歩から解説されています。 数式の一つ一つの意味を、噛み砕くように説明してくれています。 まるで、とっても丁寧な家庭教師から手取り足取り教えてもらえるような、そんなシリーズです。 4-17は、分数計算、命題、数列、図形、三角関数、ベクトルなど。4-18は、極限、高次関数、微分、積分、指数関数、微分方程式など。 4-19は、集合、確率、確率分布、統計、行列、マルコフ過程など。 どれも腰をすえてじっくり読めば、完璧に理解できること請け合いです。数学を好きになりたい人は、必読。 **
4-18 微分積分を人に教えられる本 馬場敬之 マセマ出版社 2004年 1200円
4-19 確率統計を人に教えられる本 馬場敬之 マセマ出版社 2004年 2800円
4-20 経済学のための数学入門 堤陽監修、岡村宗二著 同文館出版 2009年 1500円 著者の大学における経済原論、国民所得論の講義の副資料として用意されたものがこの本の元々の原稿だというだけあって、 経済学を学ぶのに必要な数学を、基礎から解説しています。微分、積分、微分方程式、行列・行列式と、 カバーしている分野は極めて狭いですが、数学者ではない著者だからこそ、実践的な内容に絞ったものと考えられます。 ただ、「入門」という書名を見てページを開くと、小さい文字で数式だらけなので、 高校レベルの数学から遠ざかっていた人がいきなり手にすると面食らうかも知れません。 ***
4-21 経済・金融のための数学 藤田康範 シグマベイスキャピタル 2009年 1500円 数学は積み重ねの上に成り立つものであり、学習は順を追って着実に進める必要があるが、 本書は金融・経済のための数学を効率的に身につけられるように工夫が凝らされているとのこと。 そのため、テーマを厳選して抽出し、必要に応じて例題が掲載されているので、読者はそれを解きながら理解を深めることができます。 著者がこれまで中学、高校、大学、大学院等で行ってきた講義のエッセンスをまとめたものだという贅沢な1冊。 それほど高度な数学は出てきません。 **
4-22 確率を攻略する 小島寛之 講談社BLUE BACKS 2015年 900円 講談社ブルーバックスの1冊。「ギャンブルから未来を決める最新理論まで」が副題。
第T部 世界は確率で動いている 第U部:確率と大数の法則 第V部 ギャンブルと期待値 というタイトルを見てもわかるように、 教科書というよりは面白い読み物としての側面が強いですが、必要なところはちゃんと数式を解いて説明しています。 中学、高校で確率を学んだのに忘れてしまった人が、もう一度攻略するための足がかりとなる本。
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5.不動産金融工学・不動産投資論

不動産の評価に金融工学的手法を取り入れるための基礎から応用まで。

No. 書名 著者名 出版社名 出版年 価格
(税抜)
コメント 難易度
5-1 入門 不動産金融工学 川口有一郎 ダイヤモンド社 2001年 2500円 不動産金融工学とはどんな学問かということを、基礎知識を有しない一般のビジネスマンにも理解できる ように解説された平易な本。全体を概観するために。 **
5-2 不動産ファイナンス入門 片岡隆 中央経済社 2000年 2400円 不動産金融をテーマに、従来の経済学に立脚して丁寧に書かれた本。ただし、不動産評価に触れた部分については、 鑑定評価について、正常価格概念についてなど、理解が不十分ではないのかという疑念を感じます。 **
5-3 不動産投資分析論
−金融理論との融合をめざして
前川俊一 清文社 1999年 2800円 我が国で不動産金融工学という言葉が生まれる以前に、不動産と金融を結びつけようとした フロンティアとも呼べる貴重な本。実務に活かせるヒントも多く得られ、鑑定士必携の書と言えます。 *****
5-4 不動産金融工学 川口有一郎 清文社 2001年 3500円 不動産金融工学の全貌を網羅した体系的なテキストは、今のところこれしかないのではないかと思います。 当然、DDCF法、リアルオプション等を含みます。こちらも必携書。 *****
5-5 入門 リアル・オプション 山本大輔 東洋経済新報社 2001年 2400円 リアルオプションとは何かを学びたい時、最初に読むと良い本。 広く浅い内容で、実例もたくさん入っており、たいへん読みやすいです。 **
5-6 リアル・オプション
経営戦略の新しいアプローチ
マーサ・アムラム、ナリン・クラティラカ著、石原雅行ほか訳 東洋経済新報社 2001年 3600円 こちらもたくさんのケーススタディーが盛り込まれていて読みやすいですが、 それだけにやや冗長な感が否めない本です。 **
5-7 [決定版]リアル・オプション
戦略フレキシビリティと経営意思決定
トム・コープランド、ウラジミール・アンティカロフ著、栃本克之監訳 東洋経済新報社 2002年 3800円 伝統的なNPVの手法、ディシジョン・ツリー、リアルオプションと比較しながら説明され理解しやすい。 5-5、5-6の後、この本に読み進むと良いでしょう。 ***
5-8 リアルオプション レノ・トゥリジオリス著、川口有一郎ほか訳 エコノミスト社 2001年 9800円 リアルオプションの教科書と言えばこれ、というほどの本。ただし、約500ページに及ぶ厚みと、 覚悟がなければ購入できないような値段なので、真剣に勉強、研究がしたい人向き。 姉妹本ともいえる「投資決定理論とリアルオプション」も同社から出ていますが、同じ値段なので、 私もまだ手が出せないでいます。 *****
5-9 不動産金融工学とは何か
 リアルオプション経営と日本再生
刈屋武昭 東洋経済新報社 2003年 1800円 理論の説明ではなく、考え方とか、それがなぜ必要かという観点から丁寧に 解説されています。不動産鑑定評価基準改正点の説明部分では、2003年改正と1991年改正の内容との 混同も見られ、収益還元法が1991年に初めて導入されたかのような認識の誤りが散見される (実際はそれ以前から評価手法として確立している)ので注意が必要です。 **
5-10 アセット・マネジメント
 確率統計手法による資産管理運用
中村孝明 鹿島出版会 2003年 2700円 基礎編では、確率論に必要な簡単な数学から始まって、金融工学全般を網羅しようとしている姿勢はよいのですが、 初学者がいきなり読んでも完全に理解することは難しいと思われます。 一方、後半のアセット・マネジメント編は、「アセット・マネジメントの基本的考え方」 「Stochastic-DCFモデル」「資産価格とパフォーマンス」「アセット・マネジメント」の各章からなり、 実務家の興味をそそる切り口ですが、下世話な実務指南書とは違い、あくまでも数理を中心に進められているところが 好印象です。 ****


6.統計学・多変量解析

経済分析のツールとして、また金融工学にも不可欠な統計学を初歩から学んで使えるようになるための教材。

No. 書名 著者名 出版社名 出版年 価格
(税抜)
コメント 難易度
6-1 はじめての統計学 鳥居泰彦 日本経済新聞社 1994年 2233円 主に大学生をターゲットとして、かなりレベルダウンして書かれたわかりやすい本として定評があります。
慶應義塾塾長(当時)の著者が、それまで授業で使っていたレクチャーノートをベースにまとめたとのことで、 いわば現場のノウハウが詰まっている。 途中で挫折せず読み進めれば、基礎力が身につくはずです。
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6-2 実践としての統計学 佐伯ゆたか・松原望編 東京大学出版会 2000年 2600円 まえがきによれば、How toではなく、WhatとWhyを考える統計学の本だとのことで、現実に使う、即ち実践を意識して、 わかりやすく書かれています。例えば、統計的検定を行う際の無作為配分について、それがどういう意味を持ち、 どのように行われるべきなのか、無作為抽出とはどう違うのか等ということがしつこいくらいに書かれていますが、こういう本は珍しいと思います。 **
6-3 統計学ハンドブック 猪俣清二 聖文社 2000年 922円 「初歩から理解できる」とか「基礎」の文字があるとおり、身近な例をたくさん挙げて説明してくれています。 座右においていつでも参照できる手軽な本。 **
6-4 ベイズ統計学入門 渡部洋 福村出版 1999年 3800円 統計の勉強を進めていると、「ベイズの定理」というのが出て来ます。ベイズ統計学は、推測統計の主要分野をなしていて、 経済学や社会学などでも事前情報を用いて推測を行う場合に必須の知識です。これを、初歩から学べる本ですが、 「入門」というにはかなり難易度が高いかもしれません。 ****
6-5 すぐわかる多変量解析 石村貞夫 東京図書 1992年 2000円 書き込みながら理解できる「よくわかるシリーズ」の多変量解析版。重回帰分析、主成分分析、判別分析について、 それぞれの手法を使うと何ができて、使う際の注意点はどこか等について、初歩から非常にわかりやすい内容に なっています。自分で計算してみることによって、手法が体感できます。 **
6-6 多変量解析のはなし 有馬哲・石村貞夫 東京図書 1987年 2000円 書名のとおり、どのように使うかのテクニック論というよりは、多変量解析のそれぞれの手法はどんなものなのかを 解説してくれています。もちろん計算例もあるので、きちんと勉強できます。 *
6-7 多変量解析法入門 永田靖・棟近雅彦 サイエンス社 2001年 2200円 「多変量解析法とは」「統計的方法の基礎知識」「線形代数のまとめ」から始まり、 単回帰分析、重回帰分析、数量化1類・・と順を追って進みます。各手法の最初には、 「適用例と解析ストーリー」の項が設けられ、非常に読みやすい構成になっています。 一見数式が多いですが、展開などを丁寧に既述しているためです。 ***
6-8 入門 多変量解析の実際 朝野熙彦 講談社サイエンティフィク 2000年 2800円 本書の3つの方針として、「数式展開はできるだけ避け、絵と言葉で多変量解析のイメージを伝える」 「実務の現場で利用頻度が高い手法をカバーする」「計算はコンピュータに任せてよいが、ユーザーは アウトプットの意味がわかる必要がある」とあり、実に現場目線。 構成も、いきなり「コレスポンデンス分析と数量化3類」から始まっていて、普通の統計の本の常識を覆す書き方に、 目が覚める思いです。 ***
6-9 すぐわかるEXCELによる多変量解析 内田治 東京図書 1996年 2800円 とにかく実践に主眼をおき、EXCELを用いて多変量解析を行う方法を、実に初歩的なことから教えてくれます。 それぞれの数値の持つ意味なども、適宜解説を加えてくれてはいますが、How toに偏っているので、 理論の基礎を別の教科書で仕入れながら使う必要があるでしょう。 *
6-10 Excelで学ぶ統計 統計で学ぶExcel 坪井達夫 エーアイ出版 2001年 2600円 著者はパソコンを作る側のメーカー出身であるだけに、実践を通じてパソコンソフトを学びましょうという姿勢で書かれていて、 初心者にも取っつきやすい内容になっています。Excelでこれだけのことができるのか、という発見もあります。 サンプルデータのCD-ROM付です。 ***
6-11 実践ワークショップ Excel徹底活用 統計データ分析 渡辺美智子・小山斉 秀和システム 2003年 2500円 上記6-10は理論側からの解説本だと言えますが、こちらは実践側からの解説本と言えます。 経済分析やマーケティングの現場で要請される解析手法を、Excelを使って説明しています。 難易度は高くありませんが、かなり突っ込んだ実践的な本なので、基礎知識なくいきなりここに来るのは、 若干危険かもしれません。こちらもCD-ROM付です。 **
6-12 不動産のやさしい統計分析手法 吉野伸 プログレス 2003年 2800円 統計の一般的な書籍ではありませんが、不動産の価格や要因等に対して統計分析手法を適用するために、 実践に即して初歩からわかりやすく書かれています。特に「活用編」では、具体的事例に則して分析例を示してくれています。 理論の教科書ではないので、他に統計理論の入門書が必要でしょう。 **
6-13 道具としての統計解析 一石賢 日本実業出版社 2004年 2200円 4-15「道具としての物理数学」と同じ著者による統計学の本。「本当に道具として使いこなすには、本質を理解するしかない」 というスタンスで、統計学の"なぜ"を丁寧に教えてくれます。正規分布、カイ2乗分布、F分布、t分布・・・などのもつ意味を 解説してくれていて、まさにこんな教科書って今までなかったなあと思わせてくれます。 ****
6-14 完全独習 統計学入門 小島寛之 ダイヤモンド社 2006年 1800円 使うのは中学数学だけ!と書かれた統計学の超入門書です。微分積分もシグマもまったく使わないで、 検定や区間推定という主要テーマの理解に到達することができるとのことで、 確かにこれ以上平易には書けないくらいの内容です。 あまりに簡単すぎて、途中で読むのが馬鹿馬鹿しく感じられるようなら、既に基礎はできている人だと言えるでしょう。 反面、この程度の本でも分からないという人は、残念ながら統計学は諦めたほうが良いでしょう。 こんなに簡単な統計学の本は、なかなかないです。 *
6-15 統計確率のほんとうの使い道 京極一樹 実業之日本社 2012年 762円 文字は縦書の新書版。裏表紙に書かれている次の解説文を読めば、本書のレベルが分かります。
『「私は数学が苦手。仕事も営業系サラリーマンだし、ちょっとはエクセルもできるから数学は必要ない」と思っている人も 多いのではないでしょうか。でも現実にある数字の読みこなし方を知っている人とそうでない人では、 ビジネスの成否にもはっきりと差が出てくるのは事実。表計算ソフトはあくまでも道具です。 その背景にある統計の解析術こそが大切なのです。本書では中学・高校レベルの数学で理解できるように「統計と確率」 をわかりやすく解説します。』
統計学に関しては相関、推定、検定等のさわりの部分だけなので、あくまでも入口の読み物としての本です。
*
6-16 日本統計学会公式認定 統計検定2級対応

統計学基礎
日本統計学会編 東京図書 2012年 2200円 タイトルの通り、日本統計学会が実施する「統計検定」2級の水準に合わせ、同検定の出題委員会を中心に編集されたもの。 2級の設定レベルは「大学基礎科目としての統計学の知識と問題解決能力」とのことで、 理工系学部または経済学部で統計学を学んだ人の学び直しには最適。コンパクトにまとめられてムダがないですが、 反面、高校数学すらおぼつかない人には攻略は難しいでしょう。 ***
6-17 統計学が最強の学問である 西内啓 ダイヤモンド社 2013年 1600円 言わずと知れたベストセラー。インパクトのあるタイトルは、流行語にすらなりました。 なぜ統計学が必要なのか。統計学で何ができるのか。 ビジネスの現場における具体的な事案を紹介しながら統計学の役割が解説されているので、読者は知らず知らず引き込まれます。 ただ、統計学のテキストではないので、実際に使えるようになるためには、他のテキストで基礎から学ぶことが必要。 [実践編]では、実際の解析手法などが説明されてはいますが、自ら使うためというよりは、 分析されたものを読み取るための基礎的知識が養える程度のものです (但し、[実践編]の最後に「数学的補足」が付けられています)。 *
6-18 統計学が最強の学問である [実践編] 西内啓 ダイヤモンド社 2014年 1900円
6-19 身につく ベイズ統計学 涌井良幸・涌井貞美 技術評論社 2016年 1880円 平易に書かれたベイズ統計学の入門書。例題や図表、グラフでわかりやすく解説していますが、 ベイズ理論やベイズ統計学を理解するためには、その前提条件として確率・統計の基礎を理解している必要があります。 そのあたりを考慮し、一応確率論の基礎から解説してくれていますが、やはり手薄。 高度な数学は回避したと書かれていますが、正規分布の確率密度関数などが普通に出てきます。 基本ができていない人は、他書で学んでからにしましょう。 ***
6-20 大学4年間の統計学が10時間でざっと学べる 倉田博史 KADOKAWA 2017年 1500円 統計学のおいしいところを、全20項の構成でざっと解説した本。 東大教養学部で主に新入生向けに統計学を教える著者だけあって、非常に平易に、 しかし理路整然と、基礎から一つ一つ要点を解説してくれています。 これだけですべてを学ぶことはできませんが、まさに大学生が副読本として使ったら頭に入りやすいような内容です。 イラスト入りで文字も大きく、非常に取っつきやすい本です。 *


7.行動ファイナンス・行動経済学

近年脚光を浴びている新分野。従来のファイナンス理論や経済学を補完すると期待される行動ファイナンス等を 学ぶための書籍。

No. 書名 著者名 出版社名 出版年 価格
(税抜)
コメント 難易度
7-1 行動ファイナンス
市場の非合理性を解き明かす新しい金融理論
ヨアヒム・ゴールドベルグ、リュディガー・フォン・ニーチュ著、真壁昭夫監訳 ダイヤモンド社 2002年 2000円 国内でまだ行動ファイナンスに関する書籍がほとんど見られなかった頃に、いち早く出版された本です。 行動ファイナンスとはどういう学問なのかを概観するのに適しています。序文は、 「人々は『0000001』という番号の宝クジを好まない。」という文章から始まっており、投資意思決定や市場予測に いかに不合理なバイアスがかかっているかを説明し、行動ファイナンスの要諦であるプロスペクト理論の解説へと つなげています。 **
7-2 最新 行動ファイナンス入門 ジョン・ノフシンガー著、大前恵一朗訳 ピアソン・エデュケーション 2002年 2000円 上記7-1と同様、国内でまだ行動ファイナンスに関する書籍がほとんど見られなかった頃に出版された入門書です。 100ページ程度の薄い本。これまでファイナンス理論は心理学を無視してきたが、投資判断に影響を与える様々な心理的バイアスについて 学ばなければいけないとして、具体例を紹介しています。読み物として気軽に読むことのできる平易な内容です。 *
7-3 行動ファイナンス −理論と実証− 加藤英明 朝倉書店 2003年 3400円 大学教授である著者が90年に『株価変動とアノマリー』を著した頃まだ異端視されていた行動ファイナンスが、 いまやファイナンスの一分野として確固たる位置を占めつつあると、はしがきで述べられており、この分野にかなり先駆的に 取り組まれてきたことがわかります。理論編と実証編に分かれ、後者では実際に日本市場の数値を使って、投資家行動を分析しています。 入門書を卒業したレベルの方におすすめ。 ****
7-4 図解で分かる ランダムウォーク&行動ファイナンス理論のすべて 田渕直也 日本実業出版社 2005年 2400円 物理学に端を発するランダムウォーク理論では、テクニカル分析もファンダメンタル分析も無力ということになるが、 実際のマーケットには非効率な部分があり、収益機会が隠されている。その非効率性を人間心理が発生させているとしたら、 心理バイアスの市場への影響を分析する必要があり、そこに行動ファイナンスの存在意義がある。 そのような流れで、両理論をわかりやすく解説しています。 **
7-5 行動経済学入門 多田洋介 日本経済新聞社 2003年 1900円 「行動経済学とは何か?」「人間はどこまで合理的か?」「近道を選ぶと失敗する」 「プロスペクト理論」「非合理的な投資家は市場を狂わす」などの章立てで、 気軽なビジネス書の体裁を取ってはいますが、内容はしっかり理論的で、行動経済学のエッセンスを学ぶことができます。 これは出版社の問題ですが、このような書籍が"縦書き"なのは解せません。せっかく内容がよいのに、読みにくいです。 **
7-6 証券市場と行動ファイナンス 俊野雅司 東洋経済新報社 2004年 3200円 序章で「本書の問題意識」として、「従来の理論は、非常に多くの前提条件のもとで構築されており、 その中には、きわめて現実性が疑わしいものも含まれている。その前提条件が成立していない場合には、その上に構築されたエレガントな 理論体系は、砂上の楼閣になってしまうのではないかという危うさを日常的に感じていたのである。」と書かれており、 投資情報提供業務に従事してきた中での疑問が発端となっていると説明されています。本書の内容自体は著者の博士論文ですが、 実証研究が盛り込まれており、現場の視点が大切にされていることがわかります。 ****
7-7 行動経済学
感情に揺れる経済心理
依田高典 中央公論新社 2010年 780円 「行動経済学とはなにか」という章から始まり、この分野が発達してきた経過から解説されています。 新書らしく数式は必要最小限で、読みやすい話題を選びつつ、 理論のエッセンスをわかりやすく解説してくれています。 **

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